先日、とあるショッピングモールのおもちゃ売り場で、
「買って〜!」とグズっている男の子がいました。
そこまではまぁ、よくある光景。
ただ、その男の子はどうしてもあきらめきれなかったのか、
のちに泣き叫びながらフロア中を走り回っていました。
親の立場からすると困り果ててしまうところですが⋯
でも、この少年の物凄い執念、
単なる「おもちゃが欲しい」というワガママだけではないってご存知でしたか?
人間は、自分の行動や選択の自由を他人から制限されたり、
奪われそうになったりすると、無意識に強く反発し、
なんとしてでも「自由」を取り戻そうとする
「心理的リアクタンス」という心理法則が働きます。
少年にとって目の前のおもちゃは、
もしかすると本来「手に入れられるはずのもの(=自由)」だったのかもしれません。
それを親から「ダメ!」と明確に制限された瞬間、
理不尽に自由を奪われたと感じてしまった。
すると「おもちゃが欲しい」という純粋な欲求は、
いつの間にか「親の制止を振り切ってでも自分の思い通りにする(=自由を取り戻す)」という目的にすり替わり、
感情が暴走してしまった。
あの過激な行動は、奪われた自由の大きさに比例した強烈なエネルギーの表れだったんですね。
「絶対に押すなよ」と言われると押したくなったり、
ダイエット中で「甘いものは禁止」と心に誓った途端にケーキが頭から離れなくなったり、
あなたにも思い当たる節がありませんか?
禁止されたからこそ愛されたウイスキー
この心理的リアクタンス、
実はウイスキーの歴史にも深く関わっているんです。
1920年代のアメリカで施行された「禁酒法」をご存知でしょうか?
19世紀末のアメリカでは「お酒は家庭崩壊や犯罪の原因」とするキリスト教的な道徳観や、
女性団体による禁酒運動が強まっていました。
さらに第一次世界大戦が起きると、
穀物の節約や敵国ドイツ(ビールの本場)への反感から世論が一気に加速。
その結果、1919年に憲法修正第18条が成立し、
翌1920年から国内での飲料用お酒の製造・販売・輸送を全面的に禁止する「禁酒法」がスタートしました。
お酒の製造や販売が一切禁止された時代です。
国中からお酒が消える…はずでした。
しかし、人間の心理はそう単純ではありません。
「お酒を飲んじゃダメ!」と法律で縛られたことで、
人々の「飲みたい」という欲求は逆に燃え上がってしまったのです。
結果として、表向きは普通の店を装いながら裏でこっそりお酒を提供する「スピークイージー(潜り酒場)」が大流行。
人々は隠れてウイスキーを求め、
劣悪な密造酒をごまかすために様々なカクテル文化まで発展しました。
スコットランドの歴史でも同じようなことがありました。
重すぎる税金から逃れるため、ウイスキー造りが山奥での「密造」へと追いやられた時代。
人々は政府の目を盗んで、こっそりとお酒を造り続けました。
そして、役人の目から逃れるために
「不要なオーク樽に詰めて隠す」という苦肉の策が、
今のウイスキーの美しい琥珀色と芳醇な香り(熟成)を生み出すきっかけになったのです。
禁止され、自由を奪われたことへの反発心が、
結果的にウイスキーの文化を豊かに進化させてきたなんて、
ロマンとちょっとした皮肉を感じますよね。
心の中の「反発心」を楽しむ
私たちが日常で感じるイライラや執念も、
視点を変えれば「自分の自由を守ろうとする強いエネルギー」の裏返しです。
自分の中に「ダメと言われて反発する気持ち」を見つけたら、
無理に自己嫌悪に陥らず、
「私にもまだこんな強いエネルギーがあったんだ」
と面白がってみてください。
ささいな日常のトラブルがちょっと愛おしく感じられるはずです。
今度ショッピングモールで泣き叫ぶ子供を見かけたら、
「おっ、心理的リアクタンスが発動して頑張っているな」
と、少しだけ温かい目で見守れるかもしれませんね。
今回は以上です。最後まで読んで頂きありがとうございました。

コメント